おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

小桜おせん 

小桜
この頃になると嬉しくって着てしまうのがこれ。
これって
おっかさんの形見の小紋なんですが洒落てます。
ので、これは数少ないアタシの着物の中の一張羅。

桑茶の地に桜色の桜の花びらが舞っておりまして
つまりは桑茶地桜小紋ってことですネ。
それで
襟は黒襟、でないと野暮になっちまいます。

娘、と自他共に認め、認められていた頃のアタシ
には地味だったんですが、年増になった今では
良く似合うようになってきました、オホホ.......




     きょうは波池様をお誘いし、大川の堤をぶらぶら歩いたのちに汁粉でも食べようかな、と。
     葉が目立ち始めた中の桜花は満開の時とはまた違った風趣があって好きなんですヨ。
     
     さ、お気に入りのこの着物に『去年みたいに』汁粉をこぼさないよう気をつけなければ。
     ・・・ その前の年は、たしか御酒をこぼしたっけ ........
     なにはともあれ、まだ年増(およそ二十四、五才)になって二、三、四年のアタシ。
     年増としてはまだまだ駆け出しなので、早く立派な(?)年増女になりたいものでございます。
                さくら
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下帯に工夫 


お、これは!
おせんが縫いあげた下帯(ふんどし)を身に付け、いざ紐を結ぼうとして波池浪人が驚いた。
何に驚いたかといえば、両端の紐の長さが違っていて結び目が右脇にきたこと。
おかげで腹のあたりがスッキリして具合がよろしい。
刀を差すのが左、それを避けて右に結び目がくるようにしたのがおせんの工夫。

   「うむ。なかなか気のきいたおなごじゃ」

それに酒を呑んだところが色っぽい ......
と、思わずにやけそうになる顔をぐっと引き締めた波池浪人なのであった。

                酒セット  江戸踊り

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四十八茶百鼠 


江戸三百年といわれるくらい長く続いたのが江戸時代でございますネ。
実際そんな三百年もあったわけじゃなく、二百数十年だったわけですが長かったのは事実。
マ、語呂がいいから三百年ってことなので、そこらあたりは見逃しておくんなさいまし。
そんな江戸時代の折々に幾度となく発布されたのが奢侈(シャシ)禁止令のたぐいですが 
これは派手な着物などはイカン、平たく言えばそういうことなのでございます。
着物の色なんかでも黒や茶、白にねずみに藍染めの青などしか使えない!なんてことも。
けれど、それで「ハイ、さいですか」とならないのが江戸者でございます。
色数を限られると、それならばと色調を多く作って「これでどうだい!」なのでございます。

たまに耳にする四十八茶百鼠というのは茶色だけでも四十八、ねずみ色だと百色もあったという例え。
この数も語呂あわせの匂いがしますが、こういった工夫の積み重ねが江戸の粋を作り上げていった、
そんな気がいたします。

ア、古着売りが来たようだネ。ちょっと冷やかしてみるとするか。

            担い売り
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まさかの遺伝子 

こうして昭和や平成にちょこまかとお邪魔するようになって何年になるんだろ?
最初は戸惑うことばかりだったけれど、近ごろじゃ慣れてきて路上観察なんてことも。
イエ、観察たって大したことじゃございません。
女のアタシが興味を持つのは化粧衣装のたぐいですからね。知れてます。

街行く人を眺めていて不思議に思ったのは年配の御婦人方の洋服姿でございます。
なかにはもちろん素敵な、センスがいいというか そんな御方もいらっしゃいますが
そうでない御方となると

  服の色が汚い。まるで絵の具の筆洗いバケツの中の濁り水みたい
  違う柄の組み合わせはいいが、それがちぐはぐになってしまってる

というわけで首をひねってたんですが、その疑問が先日氷解いたしました(と思います)

   『その色、その柄の組み合わせは着物だとイケてるじゃないか!』と、ネ!

着るものの選択肢が着物しかなかった時代があまりに長かったせいで
その長い時の蓄積された経験が凝縮されて現代に受け継がれている・・・!?
いわば『着物遺伝子』じゃないのかネ と思った次第。。。

ふっふっふ これは ま、おせんの戯言でございます。


    広重


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着回しの術 

朝夕だいぶ涼しくなってまいりました。
ところが、そうなるとせっつかれてるような、ちょっと落ちつかなくなる長屋の女達ですが、
これは衣替えの時期が近づいた頃特有の気分なんですよねぇ。

   「おせんさん、近いうち皆で一緒にやろうよ。心づもりしといておくれ」
   「アイヨ わかったよ。けどお虎さんも相変わらず気が早いねぇ フフフ

お虎さんが言ってたのは洗い張りの事で、夏の間着ていた単衣(ヒトエ:裏地無し)の着物をほどき
一枚の布状にして晴れた日を狙って洗い、あとは板戸などにピンと張るのが洗い張り。
それが乾いてから裏地を縫い付けて袷(アワセ)に仕立て上げると秋の衣替えも完了です。
つまり、夏用冬用それぞれ別な着物を持ってるわけじゃなくて、一枚の着物の裏地を取ったり
付けたりしてオールシーズン着用してるのです。

ここだけの話ですがアタシ達長屋住まいのような者が持ってる着物の数は少ないんですよね。
なにせ手織りの時代ですから生地の生産量も限られていて新品なんて高くて手が届かない。
アタシなんて親の形見と古着屋で買ったものが数枚、それを大切に着ているのでございます。
たとえ破けたりすり切れてしまったりしても継ぎをあてて、なおも着るわけです。

で、着るものが少ないってことは容れ物も小ちゃくていいってことで、どこの家にもタンス
なんて代物は無いですし、また買えるお金も 置く場所も無いのが実情でございます。
アタシの着物や帯などは柳行李に入れていますが、お虎さんちは竹で編んだ行李(コウリ)だし、
家によっては大きな風呂敷に包んだだけってのも当世珍しいことではございません。



       柳行李


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