おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

酒乱組 よきこときく 


鯉料理を振る舞ってもらえるというので材木商である左兵衛さんの寮まで出向いたおせん一行。
招き入れられた客間には商売柄か左兵衛さんの御先祖様が使っていたという斧(ヨキ)が飾ってあった。
待望の宴が始まると、酒も鯉料理も次々に尽きることなく運ばれてくる。
鯉のあらいに鯉こくや塩焼き、ウロコのパリパリ揚げ、まさに鯉尽くしで酒は灘の下り酒。

 「これは小梅の青沼でとれる鯉なんですが泥臭くないのが特徴なので .... 云々 ..... 」

が、左兵衛の説明など うわのそらの面々、舌鼓を打ち喉を鳴らしギャハハと笑いが止まらない。
そのうち左兵衛の娘珠代が下手な琴(コト)を弾き始めたのがきっかけとなり、参八が口を突き出し
タコ踊り。波池浪人はといえば居合いで障子を次々にスパッと斜め切断の狼藉。
若侍の静馬は片肌脱ぎのおせんに手を握られるのに閉口し、ついに庭に逃げた。
早々に酔っぱらって庭に這い出た供の猿三を探すという口実である。
しかし夕暮れの庭に菊(キク)の香りがするばかりで人のいる気配はない。

 「 サッ サルゾーたんは いまちたか 〜 レロレロ 。。。

静馬のあとを追って庭に下りたおせんは完全に酔いがまわっており、千鳥足である。
そのおせんが、石像と化したかの如く棒立ち状態の静馬の視線の先を見、アッと声をあげた。

 飲み過ぎちゃってバカだよ。 けど、よっぽど水が飲みたかったんだねぇ ......
 
けれど、まだ間に合う。猿三の爪先がピクピク動いているからネ。

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天狗俳諧 


参八が持ち込みの大シマアジの皮を剥いで刺身にしてみると、なんとまあ大層な量じゃありませんか。
で、参八をどやしつけて波池の旦那を呼びに走らせ、二人が着くなり酒盛りを始めたわけです。
エッ まだお天道様が真上? 構やしませんてば。
刺身は生姜醤油で。他に用意したのは干し茄子の煮物、干し胡瓜の九チャン漬け。井戸で冷やした酒。

  「ふむ、おせん殿は野菜を干して かように使うか ..... ここに美女ありて美味作る、だのう」

  「あラん 〜 やでございますよォ 旦那ァ! こんな珍しくもないものを。オッホッホ」

男前の旦那に誉められクネクネしているアタシを尻目に、参八が天狗俳諧をやろうと言い出しました。
それは三人いればできる遊びで、一句の五七五を三人がそれぞれ受け持つのだとか。
芭蕉や基角もビックリの秀逸な句が偶然できる事もあるらしいのですが ......
ま、格調高く始まったほうが面白いでげしょ。と参八。
そんなわけで 今回アタマの五文字は古歌から枕詞を拝借することになりました。
ちょうどあった巻き紙に、まず参八が五文字書いてそれを隠し、次に波池の旦那が七文字。
最後の五文字を書くアタシに先の二人が書いた文字は紙を巻いて見えないよう隠されています。
で、できたのが

    ももしきの 武士は食わねど 茶をわかす

案外の出来に気を良くし、冷酒飲みつつ天狗俳諧遊びが延々続いたのは当然のことでございます。

が、外は目も眩みそうなカンカン照り。蝉の声に追い立てられるように、長屋の家々の端から端、
戸という戸に泥棒よけの焼き印を押し歩き、汗みずくになっている大家さんがこの遊びに合流する
のは、もうしばらく後になるようでございます。
                       チビ下駄
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