おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

たま 


独り住まいのお竹が猫を飼うようになったのは気まぐれからであった。
野良に面白半分に餌を与えたらそのまま居ついてしまったのである。
お竹は猫をタマと呼び、タマはお竹になついた。
時刻がくるとタマは家の前で木戸の方を向いてちょこんと座り、お竹を待つのである。
お竹にとってタマがかけがえのない存在になるのに時間はかからなかった。

そのタマが何も食べなくなって痩せ衰えたあげく姿を消してからすでに七日が過ぎている。

江戸三毛猫
 タマはどこだ タマーッ どこだタマ 
気づいてすぐ血相を変え探したがタマは見つからなかった。
どんな猫でも飼い主に自分の死ぬ姿を見せないと聞いたことがある。
 だからタマは出ていったのだ。
 元気な頃のように甘え声を出す事もせず
 やわらかな身体をすりつけてくることもせず出ていったのだ。
タマが出て行ったのは仕方がないことなのだ。
ペタンコの体で出て行ったのは仕方のないことなのだ。

               
               だが、そう思いはしても お竹の胸の内は切ない。


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