おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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婆さま 享保元年十月 参道の女その十一 

それを聞いた作次の顔がみるまに呆けたような泣いているような妙なものになった。

「じゃ、じゃあ 死んだおっかさんの? おっかさんの方の婆さまで?」

父である熊造の母親、そっちの婆さんなら知っている。
しかし和尚の口から出た言葉は作次が考えもしないものであった。

「確かにおっかさんの方の婆さまだが、お前のおっかさんは熊造の女房じゃないぞ」

固唾を呑んだ作次にかまわず和尚は語り続ける ・・・

 今ごろになって何故このような話しをするのか、わしにもよう判らぬ。
 が、婆さまが急な病いでなくなられたことが関係あるのは間違いない。
 婆さまはお前を我が孫ではないかと思いつつも確証は得ておらなんだ。
 三途の川を渡りながらも心残りだったろうと思うと、なあ . . .
 わしも迷うているのじゃ。何も知らなかったお前に、このような事を
 言うていいものなのか . . .

 だが作次、どこの婆さまかは言えぬが、せめてその命日にお前が孫として
 線香の一本でもあげてくれるならば婆さまも喜ぶと思ってのう . . .


いつのまにかあたりには夕闇が忍び寄り、和尚の顔も定かではない。



                      犬



                
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