おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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深川ガタクリ橋 


カマス

深川佃町の遊所が軒を連ねるこのあたりは通称アヒルと
呼ばれている。
なぜアヒルかといえば佃島の網干し場が近い場所柄ゆえ
網干(アミヒル)のミの字を略してアヒルなのだとか。

懐があったかい時はそこの市川屋で遊ぶことにしていた
鳶職の仁八、この頃ではアヒルから足が遠のいている。

というのも、アヒルに行くにはガタクリ橋(蓬莱橋)
渡らないといけないのだが、この前市川屋で遊んだ帰り
にガタクリ橋を渡ってすぐの所に今贔屓にしている店を
たまたま見つけたからなのである。

そこは客の五人も入れるかどうかの狭くて小さな飲み屋
で酒が特別旨いわけでも珍しい肴があるわけでもない。
贔屓にしている理由はただ一つ、女である。
店をやっているおイネという年若の化粧っけの無い女に
惚れてしまったのかもしれない仁八なのだ。

初めの内は市川屋の帰りに寄っていた仁八だったのだが
この頃では遊び帰りの顔をおイネの前にさらすのが厭に
なってきて、アヒルまで足を伸ばさずにいるのである。

酒をちびりちびりと飲んで長居を狙っている仁八の鼻先
に、おイネの焼くカマスの匂いが漂ってきている。



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