おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

貧乏神上洛す 

住処を決めるにあたり普通の家よりも寺社を好んだ貧乏神の甲ですが江戸では失敗が続き、腐る事しきり。
それで、これはワシのやり方や選び先が間違ってたのかもしれん、と心機一転江戸を離れたのがひと月前。
三条大橋
さて、京は三条の大橋を貧乏神乙が渡っていると向こうから来たのが江戸から上洛の貧乏神甲。
ところが乙の神は挨拶よりも先に相手のいでたちに目を剥(む)くことになります。
なぜなら甲の神の格好は黒羽二重の着物に上等の帯を締め、黒塗りの下駄に今結ったばかりの様な頭をし、
雲間を縫って射す陽の光に金ごしらえの脇差しがキラキラ光っているのですから。
それで思わずカッとなった乙の神、古ぼけた袖無し紙羽織を震わせ、こめかみに青筋たて歯噛みしつつ

 「や、そなたは仲間が法を忘れたか! そのナリは何じゃ! はてさて福の神にでもなられたのか」

と、ボサボサ頭を振り立てつつ精一杯の皮肉をまじえ責めれば、甲の神いわく

 「これ、よそにもらしてはならぬぞ。この格好も今は廓を主にするゆえじゃ。まず見かけで騙し、
  大尽(大金持)と親しゅうなる策じゃ。フフ、蔵の二つ三つを食いつぶすのが楽しみな事じゃ」

はてさて甲の神様の思惑通りにいくのか!いかないのか?楽しみなことではございます。
 
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 甲之神関連
    (壱)貧乏寺開帳  
    (弐)ゲゲゲの朝拝
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