おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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ドジョウ狙い 


同業の柳屋が繁盛していく様を指をくわえて見ていただけの平十郎ではない。
房楊枝作りで腕のいい職人を捜し、柳屋よりも幾らか安くもし、と 努力はしてきている。
柳屋とは見世も近くで地の利は一緒、モノはこちらの方が上等だ。
しかもかなり安くしている・・・なのに客が来ない!

なぜだ、と考えるまでもなく理由ははっきりしている。
お藤である。
柳屋で楊枝を売っているお藤を絵師の春信が描いたのがちょうど一年ほど前になる。
その錦絵が人目をひき、お藤は銀杏娘とか銀杏お藤などと呼ばれて噂は江戸中を駆け巡った。
絵の評判だけなら痛くも痒くもない平十郎なのだが、今では浅草寺奥山に来るのはお藤目当ての者ばかり。
その人々が他の見世で楊枝を買うはずもなく柳屋の楊枝はバカ売れでこっちはさっぱり。

そりゃぁ 同じ楊枝を買うなら美人のいる見世で買いたいのが人情というものサ、と平十郎も思う。
思うけれども、このままだったらこっちの顎が干上がっちまう .......

   「だ、だから姉さん。こうなったら恥も外聞もねえ。柳の下の泥鰌(どじょう)狙いだ。
    オレも柳屋を名乗る! だからお紋とお吉を貸してくんねえ。給金は出す。な、姉さん。」

姪を自分の見世の売り子にしようと考えた平十郎が姉に頼みこんでから一ヶ月。
狙いは当たって春信こそ来なかったが、見世は連日美人姉妹めあての野郎どもで黒山の人だかり。
おかげで浅草の観音の脇にあった元々の見世以外に、観音の後ろにもう一軒増やすことができた。

   「恥はかいてみるものだ」

柳屋平十郎のほくそ笑む顔がいっぱしの商人面に見えるのは気のせいだろうか。
                            イチョウ
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