おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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くのいち見参 


正月二日目の夜遅くに金木犀の甘く濃い むせかえるような香りが長屋のあたりに立ちこめ始めた。
だが長屋の住人に、秋に咲く金木犀の香りが真冬に漂っている事を不思議に思う者などいなかった。
なぜなら嗅いだ者はたちまちの内に眠ってしまい、不思議を不思議と思う間がなかったからである。
どうやらその香りには強い催眠効果があるようなのだ。

そしてさっきまで悪夢にうなされていた伝蔵の枕元に、闇から滲みだすように現れた人影が

   「おぬしの家は代々の忍びであったが それを一体どう考えておるのじゃ! この腰抜けめ。
    忘れたとか聞いておらぬとは言わさぬぞ。
    わたしもおぬしと同じ身の上。今の世に忍びの出る幕はないが心構えは常に忍びのわたしじゃ。
    今宵参ったは、何事にも怯(おび)え、戸板で担ぎ込まれてばかりのおぬしにたまりかねたからじゃ。
    おぬしが忍びの者としての誇りを取り戻せるよう任務を与えねば、そう思ってのう ....... 」

同じ文句を何度も繰り返し繰り返し眠っている伝蔵の耳元で囁いたあと、その姿を消した。
そして、すぐに「今のが初夢か?」と、跳ね起きた伝蔵だったが夢の生々しさが現実のことのようにも思え、
あたりを見回したが人影など無く、やっぱり夢だったかと思ったその時「犬を育てよ。忍犬の血筋じゃゾ」と
かすかに女の声がし、その後すぐに土間の方から「クゥ〜ン クゥ〜ン」と犬らしき鳴き声が聞こえてきた。

これは参八から子犬を押し付けられ、その世話に一日で音(ね)を上げたおせんが子犬を捨てるにはあまりに
忍びなく、また哀れにも思えたゆえの苦肉の策なのであった。
近ごろ引きこもり気味の伝蔵の慰めにはなるだろうし、ひょっとするとヤツの小心も治るかもしれない .....
などと、勝手な理屈で実行した忍者作戦が上手くいってすっかり調子に乗ったおせん、金木犀の効き目が
あるうちに波池浪人も『襲っちゃおうかナ』などと けしからぬ事を考え始めている。    
        柴犬 子犬 女忍者
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      忍者 北斎漫画

              忍者 北斎漫画
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コメント

おぉ新展開!!

ついに新メンバー(わんこ)が現れましたね。名前などもつけられるのでしょう。
むむ、しかし伝蔵さんに「忍者の子孫」という暗示とは。どうなるんでしょうか。その後の展開に興味深深です。

それにしてもおせんさん、伝蔵さんに押し付けてちょっとズルイ(笑)。
がんばれ伝蔵!!

北斎漫画に忍者の絵があったのは知りませんでした。新知識。

千鳥道行 #EBUSheBA | URL | 2013/01/07 18:28 * edit *

新展開ですが


> むむ、しかし伝蔵さんに「忍者の子孫」という暗示とは。どうなるんでしょうか。

 張本人のアタシも、ちょっとやり過ぎかも。。。。と 少し反省しよ、
 と思いつつも面白いかもと ちょっと人ごと感覚!? 、なんですヨ。

ワンちゃんの名前、どうしましょ。



おせん #- | URL | 2013/01/08 16:29 * edit *

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