おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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変態ではない 


易者として同業者より格別優秀なわけではない平野卜内(ひらのぼくない) だが、客の評判は良い。
そのわけは客の年齢をずばり見抜ける目を持っていることと巧みな話術にあるからで、顧客も多いらしい。
その卜内に長屋の狭い干し場を占領されたお熊がいきり立って

   「ひとりでこんなに干しちゃって! ウチのが干せないじゃないか」

噛みついたわけだが、卜内はあご髭をしごきながら『ナニ、すぐ乾く』とニヤニヤ顔を崩さない。
なるほど、卜内が今しがた干し終えた洗濯物は竿三本にへんぽんとひるがえっているがモノは薄物ばかり。
それが褌(ふんどし)と湯文字(ゆもじ:腰巻)ばかりというのには、実は訳があって ここ数年流行っている
厄除けするなら『褌や湯文字の脱ぎ捨てで』に目をつけ、知恵をしぼった成果なのであった。

年齢当てに自信有りの卜内は本厄間近な客に見込みをつけ、晩秋の頃から客に褌の捨て場指南をしたのである。
厄除けにただ捨てるだけでは駄目、逆に福を招き寄せるくらい効果絶大なのは真新しいのをココかココに。
イヤお前様ならやっぱり『この場所』と、客が捨てたモノを自分が回収しやすい場所に指定したのである。

それで他人の褌と湯文字を多く手に入れた卜内だが、だからといって彼が変態というわけではない。
新品の木綿一反なら六百文、手に入れたのは仕立て済みのが二反分はゆうに有るからナと、捕った狸の皮算用。
あとは乾くのを待って、買い取り屋に持込むばかりなのだから彼の笑いが止まらないのも無理はない。
が、アレは買いたたかれるであろうな、と目を向けた先には染み付いた泥がどうしても取れなかった褌が一枚。

   「おまけに歯形まで付いておる」

と、伝蔵の家から出てきた一匹の子犬がそのボロ褌に走り寄るや、飛びついてじゃれ始めた。       
しかし『そんな褌はくれてやるわい フォホフォホ』とすこぶる上機嫌の卜内なのであった。
                     江戸踊り
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          歌川国貞 花暦吉日姿
             歌川国貞 花暦吉日姿

        古着の褌や湯文字は染め直して頭巾にするらしゅうございます。ホント。


thread: 歴史雑学 | janre: 学問・文化・芸術 |  trackback: -- | comment: 2 | edit

コメント

エコロジー活動

 うぅむ、平野卜内氏の行いは一種のエコロジー活動かと。経済活動と環境保護活動の見事な両立。褌リサイクル。

>古着の褌や湯文字は染め直して頭巾にするらしゅうございます。
 これも新知識。でも「頭巾→褌」の流れではないのは何故でしょうか(笑)。

 伝蔵さんがちゃんと飼っているようで安心しました。名前は決まったのでしょうか。

千鳥道行 #EBUSheBA | URL | 2013/01/12 17:06 * edit *

褌談義

褌リサイクルとは耳新しい表現!面白うございます。いいですねえ。

>  これも新知識。でも「頭巾→褌」の流れではないのは何故でしょうか(笑)。
  そういえばその流れはありませんね。
  う〜ん と、考えたのは、頭巾は色物で褌の場合は純白を好む御方が多いから!??
  色物を白に染めたり戻したりは難しそうだからでしょうか?

おせん #- | URL | 2013/01/19 10:24 * edit *

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