おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

鳴かぬカラス 


梅本三勝の家は両国橋より日本橋の方へ三丁ほど行った長町の新道の、仕立屋と搗米屋(つきごめや)
並んでいるその間の路地の突きあたりにあって表通りの喧噪は届かない。

三味線師匠という仕事柄独り身という事にしている三勝だが、人前では兄さんと呼んでいる亭主がいる。
亭主を兄さん(あにさん)と呼び、親を「おぢさん、おばさん」と呼ぶのは芸事の師匠の間ではよくある
ことでさして珍しいことではない。

さて、庭の松の木に登った亭主の吉三に、下から見上げた三勝が

 「アッ 兄さん そこそこ そこが よござんす」

手先が器用な吉造は自分で作った風見の鳥を枝に仕掛けている最中なのだ。

風の方角を見る為に鳥の形に板を切りぬき、黒く塗って松の木に据え置かれたこのカラスの風見は遠くから
見ると本物のカラスが木にとまっているように見えた。
人々はこれを面白がり、また風見に便利な為に風見カラスは江戸でこの後大いに流行り、あちこちで見かける
ようになったわけだが、それでどれだけ儲けたかは吉造を酔わせて聞き出すしかないだろう。

                松にカラス
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
thread: 花の御江戸のこぼれ話 | janre: 小説・文学 |  trackback: -- | comment: 0 | edit

コメント

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。