おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

名犬タロ 

.
伝蔵は変わった。
何も無くとも何かおどおどとした態度が多かったのに、それがなくなった。
せかせかした歩みぶりも落ちついた風に変わり、どこかしら思慮深げになったように見えないでもない。
それは子犬のタロを育てるなかで『何者かを養う』といったところから出てきた自信がそうさせるのだろうか。
毎日タロを散歩に連れて行くせいか、伝蔵の身体つきも何か引き締まってきたようで、逞しげになってきている。
そうは言っても うらなり顔に糸のような目や団子鼻といった造作自体は変わらないわけだが、気のせいか男前に
見えないでもないよねぇ ..... と、長屋のおかみさん連中も認める変身ぶりなのだ。

その長屋のおかみさん連中も伝蔵が犬を育て始めた当初は眉をひそめたものだ。
鳴かれたらうるさいじゃないか、子どもを噛んだらどうしよう、そういった不安があったからだ。
しかしタロは利口な犬だった。
無駄吠えはせず、子どもたちとはすぐに仲良しになったし、二度もコソ泥を撃退している。
つまり、おかみさん連中の心配はまったくの気苦労に終わったわけで、今では長屋全体の立派な番犬としてタロは
彼女たちに認められ、感謝されているほどなのである。

それに、もうひとつタロが彼女たちに喜ばれ好かれている理由(わけ)がある。
それは、おふさの姿が現れると必ず唸るからだ。その姿が見えている間中ずっと唸り続けている ......
理由は分らないが、タロが出戻りのおふさを嫌っているらしいという事におかみさん連中は快哉を叫んだ。

実は、色気たっぷりのおふさが出戻ってきてからというもの、長屋の男連中がおかしくなってしまっている。
ももひき長屋は全部で十二軒の内、男で独り者は四人。
六人が所帯持ちなのだがそのうち三人の女房持ちが、おふさにつまみ食いされた、らしい ......
そのつまみ食いもどこへ飛び火するか分らない今、おふさは長屋の女たち共通の敵になってしまったのである。
長屋の男連中がだらしなくヤニ下がる中、タロだけがおふさに敵意を示したたったひとりの男(?)だとしたら
たとえそれが犬であっても、憎いおふさには『ざまあみろ』で、おかみさん連中が嬉しがるのも無理はない。
       伝蔵笑う   柴犬 子犬
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
thread: ショート・ストーリー | janre: 小説・文学 |  trackback: -- | comment: 2 | edit

コメント

恐るべし、わんこパワー

そんなに伝蔵さん変わっちゃったんですか。凄いね。名犬タロの力は。
しかし、伝蔵さんの「腰抜かし芸(?)」が見られなくなるのは、少し残念です。う~ん。これは、鬼女の方もパワーアップしてもらうしか(笑)。

何故タロがおふさに唸るのか。タロ本人(本犬)にしか判らない事なのでしょうか。
私はタロがつけている綱に何か関係が有るのでは、と睨んでいます。あれ、元々腰巻でしたよね。
この辺り、上手く謎が解ければ(というよりでっち上げれば)、半七、平次といった名だたる親分と同格になれるのですが・・・。難しいです。

千鳥道行 #EBUSheBA | URL | 2013/04/04 20:05 * edit *

Re: 恐るべし、わんこパワー

そうそう、伝蔵の「腰抜かし芸(?)」があたしも惜しい !
なんとかせねば....

あ、タロがおふさに唸るわけは、また後日。。。

おせん #- | URL | 2013/04/06 20:06 * edit *

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。