おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

おちつけ 

.
口をパクパクさせつつ飛びこんできた八五郎が、熊五郎の差し出す柄杓の水を一息に飲み干し

 「じ、じじ 常念寺のハァハァ お、和尚がハァハァ し、し死んじまったってよお」
 「なんだって!? きのうおいら昼前に道で会ったが、和尚、随分元気な様子だったぜ」
 「だ、だから俺も ハァハァ 驚いてるんじゃねえか。木魚たたいてて、ぽっくりだとヨ」
 「ポクポクやっててぽっくりか。で、ところで和尚はいつ死んだんだよう 八」

まだ息を切らしている八五郎をせっかちに問いつめる熊五郎。
その大工仕事で鍛えたいかつい肩を、後ろからぽんぽんと叩いた熊五郎の女房が

 「けさに決まってるじゃないか! なぜってかい? そりゃ坊主だもの」


面白話しの集まりは三千石の旗本である青木甚太夫の屋敷の離れが提供され、大いに盛りあがった。
なかでも一番笑いを取ったのが、青木の『ぽっくり坊主』だったのである。
誰もが腹を抱えて笑い、人に能面と仇名されている宇津屋など、危うく顎を外しそうになったほどだ。

「あの『けさに決まってる』というのが近ごろ流行り始めのオチというものらしいですな。勉強になります」

帰り道、他人の評に熱心だった宇津屋が「あ、鶴田屋さんのも、とてもおかしかった!」と言った途端、
嘉兵衛は顔を真っ赤にし、「それでは、これで」と言うや着物の裾をまくって猛然と走り出した。
大店の旦那らしい風体の人物が裾を尻からげにして走って行くのを人々があっけにとられ見送っている。

実はきょう、まだ見学気分でいた嘉兵衛は、まさかと思っていたのに前に引き出されてしまったのだ。
新入りの嘉兵衛を食い入るように見つめる、人、人、人。
その時なぜか脳裏に今は亡き先代の鶴田屋、つまり父の顔が浮かび、その逸話が思いだされたのである。
そして、すっかり観念した嘉兵衛は居並ぶ人をギョロ目で見渡し、充分な間を取ったあと重々しい口調で
「南蛮人を六度見たオヤジ」と言ってニヤリ。しかし、なぜかそれだけで皆は大笑いしてくれたのだった。
しかし嘉兵衛にとって、その一席は無かった事にしてもらいたいほどキツイ威力があったに違いない。
                鶴田屋嘉兵衛
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
thread: 花の御江戸のこぼれ話 | janre: 小説・文学 |  trackback: -- | comment: 2 | edit

コメント

高度な笑い

>なぜかそれだけで皆は大笑いしてくれたのだった。
これはつまり、「本来可笑しい話をする席で、可笑しくない話をする」というメタレベルのジョークと、皆が受け取ったから、という事なのでしょうか。
それとも「南蛮人を六度見たオヤジ」が当人も知らぬ間に、何かの掛詞かジョークになっている、という事なのか。
う~ん、悩んでます。

そういえば学生の頃、友人が猛烈な勢いでしょうもない駄洒落を連発してきた事があって、もう思いつかなくなったのか、唐突に「あれは何ですか、何でもありません」と洒落になっていない事を言い、これがすごくツボに入った事がありました。


まだエアコン未使用とか!
あまり無茶はなさらぬように(笑)。

こちらは体の外だけでなく、内側もビールで冷やしております。冷やしすぎです。

千鳥道行 #EBUSheBA | URL | 2013/08/18 15:16 * edit *

高度な笑いかも

あの、「南蛮人を六度見たオヤジ」なんですけどネ
あたしも、どこが面白いのかハッキリわからないんですヨ。
あたしがお江戸のどこかで『琉球人を六度見たおやぢ』という言葉を小耳にはさみ、聞いた相手が
のけぞるほど笑ってたものですから、琉球人を南蛮人に変えて、ここで使っちゃった次第。

あたしも中から冷やす派です。キキメあります!

おせん #- | URL | 2013/08/18 16:55 * edit *

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。