おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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おせん殺し 


きょうの客は妙なお人だ。釣り舟の船頭甲吉は舟の真ん中で釣り糸を垂れている男を眺めなおした。
朝早く釣り舟を出させたその男は堅気の仕事をしているようには見えず、釣り好きのようでもなかった。
ぼんやりするばかりで魚が糸を引いても気づかないふうだし、稀に釣り上げても嬉しそうではない。
そんなこんなで舟の上で半日は経ったのだが、秋の日差しは暖かく海は凪いでいる。
それに甲吉にとってはこれが商売。どんな客でも客は客、金になるのである。
ま、暇つぶしとはいえ釣り上げた魚の名前くらいは知ってて損はねえ。そう思った甲吉は男に

   「旦那、そいつ、そうそうソレソレ。そいつオセンゴロシって言うんでさ」

言うと、その男幇間の参八は別人かと思うほど相好を崩し、驚くほどの大声でガハハと笑った。

宴席で、招待した者された者の間を取り持つのが幇間(ほうかん:太鼓持ち)の役どころ。
軽口たたいておべっか使って御酒まで頂く気楽な稼業と思ったらこれが大間違い!
客同士だとか客と芸者の間などの雰囲気が途切れた時に場を盛り上げるために繋いでいくのが仕事。
その気配りやら何やらを客に悟られずにやらなきゃならないわけで、ただのお調子者にはつとまらない。
利口を見せれば座はしらける、幇間というのは芸もありバカを装った上に機転もきく利口者なのである。

偽装に疲れると参八は仲良し(?)のおせんの家に遊びに行ったりするのだが、今回は釣りだったのである。

   紀州のおせんって人が食べた時に喉にその魚の骨が刺さって死んじまったんですと。
   で、それから紀州の方じゃその魚を『オセンゴロシ』って言うようになったと聞いとります。

客の男が笑ったので気を良くした甲吉は喋り続け、参八は笑い続けている。
                 スズメダイ
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