おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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のぞき男 

  「ア”ーーッ また来てるよ!みんな捕まえておくれッ あの男だよッ」

お熊さんのけたたましい声に飛び起きた途端、バタバタドシドシと何人かの走っているらしい音、ドブ板を踏み
割ったらしい気配、呻きながらちきしょうと吐き捨てた声、それらが一緒くたになってあたしの耳に飛び込んで
きたのですが、おかみさん連中の獅子奮迅の活躍もものかは 男は逃げてしまったようです。

  「おせんちゃん、あんた一体いつまで寝てる気だい。ア、酒臭いよ あんた。いいかげんにおし モウ。
   さっきの男はあんたの家を覗いていたんだからね。それもこれで二度めなんだから」

家の戸を音高く開けて入ったお熊さんは鼻の穴をふくらませ大きな顔を真っ赤にしてまくしたて始めました。
お熊さんの話が本当なら、または記憶違いでなければ、相撲取りのような体格の覗き男がこの長屋に初めて
姿を現したのは三日前という事になります。

その三日前という日は、幇間の参八が「おせんさんどうでげしょ」とよそいき姿を見せに来た日です。
土間でくるりと回って見せた参八は床屋帰りの首から上に、着物は藍鼠色の着流しに黒羽織、白足袋に雪駄履き
というものですから、あたしも太鼓判を押さざるを得ない出来上がりでした。
誉められて安堵したらしい参八、これから鶴田屋さんと出かけるとかで嬉しそうに雪駄をチャラチャラ鳴らしな
がら帰って行ったんですが .......

妙な男など 心あたりなんてこれっぽちも無いあたしですから、男の狙いは参八に違いありません。
そいつはきっと高利貸しか何かの取り立て人で、なかなか金を返さない参八を尾行してきたに違いない ......
あたしはそう思ったんです。
それにしても参八も情けない。正月も間近いってのに借金取りから追いかけられるなんて。

  『くわばらくわばら 。こっちに貧乏神が移ってきたら困るじゃないか。紅売りにでも行ってこよ』

というわけで昼めしあとの、ずいぶん遅めのお得意先回りになったわけですが、どうもいけません。
どこへ行っても誰かがあたしを見ているような感じがして肩が凝っちゃいました。
誰かにこっそり見られてる、これって気のせいですかねえ。
                        チビ下駄

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コメント

のぞき男の正体

>相撲取りのような体格の男
う~ん、どこかで見たような。

もしかすると、おせんさんの知り合いかもしれませんねぇ。
何か話したい事があったのかも知れません。

千鳥道行 #EBUSheBA | URL | 2013/12/10 06:40 * edit *

あたしじゃない

千鳥さんのコメント
  > >相撲取りのような体格の男
  > う~ん、どこかで見たような。
の出だしでドッキンしました。

近頃太っちゃってるから『おせんの一人二役だろう』って言われるのでは、と。

   立てば酒樽 座ればたらい 歩く姿は 越ノ海

                 ........

                    
  

鯉口のおせん #- | URL | 2013/12/10 16:53 * edit *

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