おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

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ぢゃんぢゃん蕎麦 


裏店住まいの也助、その稼業は蕎麦屋である。
だが蕎麦屋といっても表通りに見世を構えているわけではない。
也助のは夜ふけに屋台をかついでの担い売り、世間で夜鷹蕎麦と言われるものだ。

その夜鷹蕎麦だが、旨い奴から馬鹿にまづい奴までピンキリがあって、也助の屋台ではピンでもなく
キリでもない凡庸な味を守り続けている。
ピンの屋台は土佐節の上等なのを使って素敵に旨いのを食わせたりしており、也助はそれを羨ましく
思っているが、あいにく土佐節を買うほどには儲けておらず凡庸な味を貫くしかないのだ。

一杯十六文でもそれを売り切ってしまえば御の字なわけだが、もちろん思うにまかせない夜もあって
しょげ返ることもある。だが也助はこの商売がけっこう好きで自分の性に合うと思っている。
そんな也助の稼ぎ時は火事が発生した時である。冬場ならなお良い。
火事を知らせる鐘がジャンと鳴ったら屋台をかつぎ、火事の現場へ急ぐ。急ぎに急ぐ。
そして現場近くに到着するや、火事場からやや離れた安全で手頃な場所で客を待つことにしている。
しかし、これが也助だけではないことは火事場周辺のあちこちに夜鷹蕎麦の行灯が灯るので分かる。

火事見物が好きな連中はジャンと鳴ると遠路をものともせず、それっと駆けつける手合いが多い。
見物を終え帰路につきかけた野次馬連中、そこでようやく空きっ腹に気づき屋台は繁盛するのである。
                         鳥居と月
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