おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

堅い女 

清元の師匠梅三津から盗賊に入られたという訴えがあったのは、大川に花見舟も見かけなくなり
上野飛鳥山あたりの桜木が葉ばかりになった頃のことであった。

  「おやぶん、あの女 やられたと言ってましたぜ。詳しく聞いたほうが良かったんじゃ ... 」

梅三津の家を出てすぐ伝五が言ったが、矢七は「それにはおよばねえ」と、鼻で笑った。
春先から江戸中を震撼させている侍姿の盗賊は、押し入ると刀を抜いて脅しをかけ金を出させる。
それでその賊を誰ともなく侍小僧と呼ぶようになったのだが、この侍小僧は女癖が悪かった ......
押し入った先に好みの女がいれば、必ず けしからぬ行為に及んでいる。

  「伝五、おもちゃにされた女達を思い出してみろ。色気はあっても身持ちの堅い女ばかりだ。
   だが梅三津は違う。あいつは自分から誘う女だぜ。見栄がからんだ狂言、まず間違いねえ 」

あの夜、梅三津は賊が刀を抜いた時それが今評判の侍小僧だと確信し震えた。喜んだと言ってもいい。
金ばかりか美しく色気のある女の貞操まで盗むことで評判の侍小僧に襲われる .... 自分の美貌と色香に
自信を持ち、しかも男好きな梅三津は侍小僧を待っていたのである。
だが、侍小僧は梅三津の寝着の裾を刀の切先でゆっくり持ち上げた時、足をすぼませた女の顔に一瞬
歓喜の色が走ったのを見逃さなかった。それで興ざめした侍小僧、金だけ盗って逃げたのであった。

  「姿のいい、キリリとしたいい男だった .... 」

座敷の長火鉢にポンと煙管の灰を落とし、ホゥッとため息をついた梅三津。
その庭には何かをおびき寄せるまじないなのか。あれ以来毎日、朱色の腰巻きが干してあるのだが。
                           おふさ
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
thread: ショートショート | janre: 小説・文学 |  trackback: -- | comment: 0 | edit

コメント

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。