おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

芋団子 享保元年九月 参道の女その四 

羅漢寺の門前には茶店が四軒ならんでおり、作次の店は『たけや』という。
(これから先は読みやすいよう『たけ屋』と書くことにいたします。)
享保のこの頃はまだ砂糖は高価なものだったので一部の人のものでしかない。
たけ屋の団子は米粉とゆでた芋を練り合わせたもので、出来上がりにすりゴマと
ほんの少しの塩を混ぜたものをからめてあり砂糖は使っていない。
それでも芋の甘みと黒ゴマの油気の相性が良く、ほのかな塩味がきいた団子には
ほっとするような味わいがあって腹もちも良いので人気がある。
熊造が考案したこの芋団子食べたさに羅漢寺詣でをする者もいるらしい。
冬場の甘酒や干し柿、夏の西瓜などがある時も芋団子の注文のほうが多い。
こうなるとたけ屋の芋団子は名物といえよう。

ところが作次が熊造のあとを継いで店に出るようになると様子が変わった。
芋団子は相変わらず売れている。
変わったのは客の層で、女の客が増えたのである。
女たちの目あては『本所のらかんさん』ではなく作次にあった。
どうやら役者と見まがうような作次の男ぶりが評判をとったらしい。
女の客が増えてきた為に店に入りきれない客も出てきはじめてきた。
例の婆さんもいささか居づらそうになってきている。


初めてチャレンジしたホームページ連載時代小説:作2009年
今はもう消失したホームページなので、これは記録として。
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