おせんの江戸日誌

江戸と平成の世を行きつ戻りつの書き散らし

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

月明かり 享保元年九月 参道の女その五 

昨夜から降り始めた雨は昼すぎになって止んでいる。
雨が降ると道が泥田のようになるので出歩く人は少ない。
もちろん羅漢寺のあたりに人影はほとんど無い。
たけ屋の中も幼馴染みの伝吉と遅がけに珍しく駕篭で乗りつけた
婆さんだけで静かなものだ。

「作ちゃん、こう忙しくなってくると手が足りねえんじゃねえのか?」

と、言いつつ伝吉は次の団子を頬張った。

「ああ、人手も足りねえし店だって狭すぎる。けど、金もねえしな ・・・」

あとはため息になってしまった作次の言葉を追うように鐘が鳴った。
暮れ六つを知らせる時の鐘である。
婆さんが財布を取り出して銭を数えはじめた。

きょうは骨休めができた作次だが、目の下にはまだうっすらと隈が浮いている。
店が流行るのはいいが、忙しすぎて近ごろは薪を割る腰がふらついてしまう作次なのだ。

「ま、人手についちゃ俺も心あたりが無くもねえ。二、三、あたってみるつもりだ。
 作ちゃん それまで無理するんじゃねえぜ。また来るからよぉ」

待たせていた駕篭に、婆さんが乗り込むのを助ける作次を励まして伝吉は帰っていった。
深川にある船宿の雇われ船頭である伝吉、これでけっこう顔が広い。

作次はそれから里芋の茹でたのへ塩を振って食べ、酒を少しばかり呑んでから寝た。
外では十三夜の月に照らし出されたすすきのひとむらが風にゆれている。

2009年に初めてチャレンジした時代小説。
すでに消失させてしまったホームページに連載していました。
ひとつの記録として再掲中。
thread: 江戸千話 | janre: 小説・文学 |  trackback: -- | comment: 0 | edit

コメント

コメントの投稿

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。